優恵

夜更けに独りでテレビを観ていた。 若い母親が幼い子供たちにおやすみのキスをしていた。 数年前に亡くなった彼女のことを思い出した。 わたしは彼女のことがとても好きで、逝ってしまうまでの数ヶ月、 寝床から離れられなくなってしまった彼女に度々会いに行き、 別れ際には横になって天井を向いているおでこにキスをして帰った。 不意にそのことを、その数ヶ月を思い出し、堪らなく会いたくなった。 理由は無いけれど、そして申し訳無い気もするのだけれど、 成仏というものをせずにいつもそこにいるように感じている彼女に、 無性に会いたくなった。 何年も経って、あぁ、いないのか、と思う。 成仏なんかしないでわたしの肩に乗っておけ、 いつだってそう思っているのに、本当は彼女はもういない。 ただ、会いたいだけなのに。 ただ、会いたいなぁ、と憶う人がいる。